中学生向けに書き直した版
森永卓郎さんと『ニュースステーション』のかかわり
どうやって番組に出るようになったの?
森永卓郎(もりなが たくろう)さんは、2000年ごろからテレビ朝日の報道番組『ニュースステーション』にコメンテーターとして出ていました。この番組は、久米宏(くめ ひろし)さんがメインのキャスターとして有名で、放送は夜の時間帯に行われていました。
森永さんが出演するきっかけになったのは、番組がリニューアル(内容を新しくすること)したときだと言われています。もともと、船曳建夫さんという方や、ほかに何人かが交代でコメンテーターをしていましたが、森永さんはそのうちの一人として呼ばれるようになりました。週に1回くらいのペースで出演し、主に経済のお話(お金や働き方の問題)を解説していました。選挙の特番(特別番組)にもゲストで登場していたそうです。
番組に呼ばれたとき、森永さんは「久米宏さんと渡辺真理さん(キャスター)のサイン入り名刺がほしい」と冗談で頼んだところ、番組スタッフが本当にそれを用意してくれたため、喜んで出演を引き受けた…という面白いエピソードもあります。そんな感じで、番組の最後の回(2004年3月)までずっと出演していたのです。
番組でどんな話をしていたの?
森永さんは、私たちが暮らすうえで大切な「経済」の話題を、わかりやすい言葉で教えてくれる人として知られています。『ニュースステーション』の中でも、難しい専門用語ばかりではなく、生活者の目線(たとえば「給料が減ったら困る」「物価が下がっても給料が下がったら意味がない」など)で話をするのが特徴でした。具体的には、以下のようなテーマをよく語っています。
所得格差・雇用問題(お金の差や働き方の問題)
- バブルがはじけて、働いても給料があまり上がらない「デフレ不況」のときに、「年収300万円時代が来る」と警戒を呼びかけました。
- 「まじめに働いている人が“負け組”と呼ばれるのはおかしい」と、弱い立場の人の味方としてコメントしていました。
消費税の増税について
- 国が消費税を上げようとすると、森永さんは「景気が悪くなるから反対!」とよく言っていました。
- 「お金を使う気がなくなると、会社の売り上げが減って、さらにみんなの生活が苦しくなる」と考えていたのです。
デフレ経済・景気対策
- 「物の値段が安くなるのはパッと見、いいことのように思えるけど、給料まで下がってしまうから結局は幸せになれない」と解説していました。
- 「思い切ってお金の流れを増やす政策が必要だ」と、インフレ(物価が上がる状態)にする工夫を国に求めていました。
番組には久米宏さんやほかのコメンテーターがいて、森永さんといっしょに「政府はどうするべきか」「実際の暮らしはどうなっているか」を話し合う場面が多かったようです。
小泉純一郎さんへの質問
2001年4月に、自民党総裁選(自民党のリーダーを決める選挙)の候補者が番組に来たときも、森永さんが最後の質問を担当しました。そこで「年金(老後のお金)のしくみをどう変えるつもりですか?」と聞いたのに対し、小泉さんはあまり答えずに「自民党をぶっ壊す!」という有名なフレーズを叫んだそうです。この発言が注目され、小泉さんが人気になった流れもあるので、森永さんは「自分の質問が小泉内閣の誕生を手伝ってしまったかも」と後から振り返っています。
視聴者の反応は?
『ニュースステーション』は、夜の人気報道番組でした。森永さんが出るときには、「庶民の目線で話してくれてわかりやすい」という声がけっこうあったそうです。「難しい経済の話が、身近な問題として理解できる」という感じですね。実際、森永さんが「年収300万円時代」をキーワードに本を出版したら、多くの人が興味を持って買い、その本は200万部以上売れました。
一方で、「悲観的(ネガティブ)すぎる」「財政を考えたら増税はしかたない」などの反対意見もあったみたいです。ネットの掲示板には「森永さんの意見は極端だ」という書き込みもあったと言われています。また、森永さん自身も「テレビで本当のことを言いすぎると嫌がられることもある」と話していて、歯に衣着せぬ物言いが苦手だと思う人もいたようです。
この番組自体も、「リベラル(やや政府に批判的)なスタンス」の番組だと見られていたため、森永さんの発言が批判されることもありました。でも、そのおかげで「経済の森永」として名が知られるようになり、面白いキャラクターの経済アナリストとして親しまれた側面もあります。
今の日本にどうつながっている?
『ニュースステーション』は2004年に終わりましたが、その後も森永さんはさまざまな番組や著書で「庶民が豊かになるにはどうすればいいか」をずっと話し続けています。彼が警戒していた「給料が上がらない」「格差が広がる」という問題は、リーマンショック(2008年)やコロナ禍(2020年頃)を経ても依然として残っています。むしろ、非正規雇用の人が増えたことで「年収300万円どころか、もっと低い収入の人が多くなるかもしれない」という意見まで出しているほどです。
また、消費税の増税については、今でも「庶民を苦しめるだけだ」と大反対しています。さらに大胆なことに「消費税をゼロにしよう」と言ったり、「国民にお金を配って景気を良くしないとだめだ」と訴えたりするようになりました。こうした考えは、政府の方針と真っ向からぶつかることもありますが、「とにかく普通の人が暮らしやすい国にしてほしい」という森永さんのスタンスは変わっていません。
物価は少しずつ上がってきたけれど、給料や収入が思うように増えていない今の日本。森永さんが『ニュースステーション』で言っていたような、「一部の大企業やお金持ちだけが得をする社会ではだめだ」という警告は、今でも考えさせられます。例えば最低賃金を上げるべきだとか、消費税を下げて買い物しやすくすべきだとか、そういった議論は令和になっても続いています。
結局のところ、森永さんが長い間伝えてきたのは「いつも庶民の感覚を忘れずに、国や会社の都合だけで物事を決めないでほしい」というメッセージです。『ニュースステーション』に出ていたころから、そういった主張はあまりブレていません。私たちが今の経済や政治を考える際にも、彼の話したことを思い出すと、普通の暮らしやすさを大事にする視点が見えてくるかもしれません。
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